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日本男児の男らしさを信用するな [闘わなきゃ、現実と]

次の文章は夏目漱石の坊ちゃんの冒頭だ。

小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰(こし)を抜(ぬ)かした事がある。なぜそんな無闇(むやみ)をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談(じょうだん)に、いくら威張(いば)っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃(はや)したからである。小使(こづかい)に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼(め)をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴(やつ)があるかと云(い)ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。

作者は、坊ちゃんのことを、単細胞だが気持ちがまっすぐな快男児として書いたつもりだろう。
でも、俺はこの坊ちゃんという男が大嫌いだ。
坊ちゃんは、勇敢だから2階から飛んだのではない。
坊ちゃんは、臆病者であるが故に、臆病者と呼ばれることを恐れて、
無我夢中で2階から飛んだのだ。
他人の評価ばかり気にしている臆病者が、必死で勇気を振り絞っている。
そして、本人はそれが自分の強さだと勘違いして、自己陶酔している。
こういうバカには付ける薬がない。

坊ちゃんと対照的なのが、劉邦を支えて漢を築いた天才軍師の韓信だ。
韓信は、若い頃、ちんぴらから「またをくぐれ」と絡まれて、
抵抗をせずにまたをくぐる辱めをうけた。
「またくぐりの韓信」とバカにされても、どこ吹く風で飄々としていたという。
その後の活躍からわかるように、韓信に勇気が無かったわけではなく、
無用ないざこざを避けたのだ。

弱虫とからかわれて二階から飛び降りてけがをした坊ちゃんと、
またをくぐった韓信のどちらが本当に強いかは明白だ。
韓信と比べてみると、坊ちゃんの器の小ささがよくわかる。
坊ちゃんのは本当の勇気ではなく、臆病者の強がりだ。
坊ちゃんは、人の眼を気にしてびくびくしている小心者だ。

俺は、坊ちゃんに代表されるような、日本男児の男らしさとやらが気にくわない。
日本男児は、他人の目を気にしている小心者に見えて仕方がない。
「日本男児たるもの辱めを受けるぐらいなら死んだほうがまし」って、アホすぎ。
他人から見下されたからと言って、別にどうってこと無いだろう。
他人というのは、表面的だけを見て適当な評価をするものだ。
そんぐらいのことで、いちいち死んでたら命がいくつあっても足りやしない。
他人の評価に、グジグジとこだわるのが男らしさなら、そんなもの要らない。
他人の目など気にせずに、自分と自分が愛する者をしたたかに守るのが、
本当の男らしさだと思う。

そんな男に私はなりたい。


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コメント 6

サラ

坊ちゃんが大人になってから二階から飛び降りてなかったことは救いだと思います。明治時代ということと、小学生の時の「若気の至り」だから大目に見てあげたい私です(笑)今の時代、大人がそんなことをやっても誰も見向きもしないでしょうねぇ・・・みんなクールですから。大人になってから、股をくぐった韓信、私も「辱めだ?それがどうした?」と言って生きたいです。しかし、助手の先生に学生達の前でけちょんけちょんに言われて思わず切腹しそうになった私でもあります(笑)
それはそうと「坊ちゃん」・・・超有名純文学ですが、読んだことがありません・・・。
by サラ (2005-07-07 19:20) 

katuo

若気の至 りではなく、いい年扱いて就職してからもその調子なんですよ。
当てつけで辞表を書いて、その晩に教頭をボコったり・・・
「DQNが社会的不適応な行動を繰り返す背景には、
こういう自己肯定感情があるんだな」、という勉強にはなりますね。

>「坊ちゃん」・・・超有名純文学ですが、読んだこと がありません・・・。
死後50年経ってるから、ネットで読めますよ。
http://www.aozora.gr.jp/cards /000148/files/752_14964.html
by katuo (2005-07-10 23:43) 

まどか

日本の文化は「恥の文化」と言いますよね。
これって「人の評価を最重視する文化」ってことですよね。。
情けない・・・私もそう思ってました。
by まどか (2005-07-12 12:55) 

katuo

仰るように、他人の評価がどうこうよりも、
自分で善悪の区別が付かないことの方が恥ずかしいです。
自分で善悪の基準を持った上で、周りに配慮するべきなのですが、
多くの日本人には、周りへの配慮しかない。
最近のヤングにはそれすらない。
by katuo (2005-07-14 00:09) 

yosuke

私は日本男児とまでは言わないと思いますが、子供の頃から無理なことばかりしてきたと思います。
どちらかと言えば文化系でスポーツはしないほうですが、小学生の頃は毎日のようにどこか怪我していましたし、中学生の頃は背骨を折りかけて呼吸困難にもなりました。
臆病でステレオタイプ的でくそ真面目でかつ見えばかり張っていた私は、言うまでも無く優越感や自己陶酔を感じたかったのだと思います。
最近ようやく自分や他人の行動原理が理解できてきたため多少改善されつつありますが、やはりまだ人の目は気になります。
勇気を振り絞って人の目は無視しているのですが結局偽りでしかありません。
思うのですが必ずしも日本男児が悪いとか、人の目を気にしない事が良いとは言えないのではないでしょうか。
他の立場から多面的に見れば理に適っていた部分や有利に働いていた部分もあるのではないでしょうか?
抽象的な意見で申し訳ありません。
by yosuke (2005-10-11 01:37) 

katuo

どのような意図でコメントされたのかわかりませんが、
あなた自身が「自分の生き方は素晴らしい」とおもっているなら、
それで良いでは?
by katuo (2005-10-12 23:32) 

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